2017 年ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリを受賞した片山柊さんを PLAY 江古田にお招きし、ご自身で作曲された『メヌエット』を演奏していただきました。今後も定期的に演奏動画を掲載予定で、ピティナのピアノ曲事典にも掲載予定です。PLAY 江古田のイメージや片山さんの個性を加味して構成していただいた演奏の数々をどうぞお楽しみに。
さて本稿では、精力的に演奏・作曲活動をされている片山さんに、PLAY シリーズの魅力や作曲に取り組み始めた背景についてお話を伺います。
片山 柊(かたやま しゅう)Profile
北海道札幌市出身。小樽市で育ち、東京音楽大学(ピアノ演奏家コース・エクセレンス)を首席で卒業、同大学院修士課程を修了し、現在東京音楽大学演奏研究員、桐朋学園大学作曲科に在籍。ピアニストとして第 41 回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリおよび聴衆賞ほか受賞多数し、作曲家としては第 28 回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第 1 位。日本各地のほか欧州での演奏会に多数出演し、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団室内合奏団、京都フィルハーモニー室内合奏団ほかオーケストラとの共演も重ね、ソロに限らず室内楽の分野でも積極的に活動しており、2021 年 6 月には世界的舞踊家、イスラエル・ガルバンの日本ツアー「春の祭典」にピアニストとして同行し好評を博した。これまでピアノを日向加代子、斉藤香苗、武田真理、東誠三、広瀬宣行の各氏、室内楽を藤原亜美氏に師事し、現在作曲を土田英介、加藤真一郎の各氏に師事。
「まず、スタインウェイのピアノを演奏できることはとても魅力的だと思いました。PLAY シリーズに住んだら、いわば家にスタインウェイがあるのと同じ状況になるので、とても貴重な環境だと思いますね」
「自室の限られた空間内でずっと練習していると、気付かぬうちに耳も音楽も狭くなっていく感覚があるので、広い空間で響きを感じながら練習できることはとても魅力的です。ですから、練習のために積極的に利用すると思います。本番が近くなったら毎日使ってしまうかもしれないですね(笑)。また、ホールには響きもあり、緊張感も感じられるので、オーディション用の収録をしたり、演奏の配信をしたりするのにもよいですね。広さもあるので、アンサンブルのリハーサルもでき、本当にいろいろな用途で使えると思います」
「2014 年に、自身のコンサートのアンコール曲として作曲しました。メヌエットとはフランスで生まれた宮廷舞曲のひとつで、3 拍子であることと、基本的には穏やかな曲調であることなどが特徴です。わたしが生まれて初めて人前で演奏した曲がメヌエットだったこともありどこか愛着があって、作ってみようと思いました」
「元々ラヴェルやドビュッシーが好きで、音選びにおいて影響を受けていると思います。わたしはクラシックだけでなくポップスや他ジャンルの音楽も好んで聴いたり演奏したりするのですが、ラヴェルやドビュッシーの紡ぐ音には今のポップスやジャズでいうセブンスやナインスの響きに共通するものがあって、自分の中で非常に心地よく、共鳴するものがあるんです」
「初めて曲を作ったのは、ソルフェージュの授業の一環としてという形ですが、小学校中学年の頃だったと思います。当時はショパンが好きだったのでワルツふうの曲を書いたり、子ども向けの小品を書いたりしていました。子ども向けの小品というのは、たとえば『雪』とか『雨』といったタイトルがついた標題音楽ですね。お気に入りの作品がいろいろとあったので、まねっこして書いていました」
「直接的には、それほどないかもしれないですね。わたしにとって演奏とは、作者の意図や思いを理解することなので、創作することと演奏することは表裏の関係にあると感じています。ただ、譜読みや楽曲分析をするときに、作曲家のこだわりやクセのようなものを捉えることが得意になったような気はします」
「7 歳からクラシック音楽を学んでいましたが、中学生になった頃から自然と関心が広がっていって、DAW(音楽制作ソフトウェア)を使って作曲を始めました。ポップスもクラシックもそれぞれに洗練された音楽性があるので、できる限りどちらも突き詰めていきたいです。そしてそれらの知識や文化を対等に吸収したうえで、自分なりの表現にまで昇華して発表していけたらと思っています」
「やはりピティナでグランプリを受賞したことが大きかったです。多くの演奏機会をいただいたり、いろんな人との関わりが増えたりとよい経験をたくさんさせていただくようになって、こういう生活を続けていきたいと、それまで以上に強く思うようになりました」
「名刺がわりになるような自身を代表するピアノ曲がないので、しっかりと書いてみたいです。また、弦楽四重奏のような王道の編成を書けるようになりたいことと、オーケストラの編成にも挑戦したいです。よく本番では、演奏が終わったあとに作曲家が客席から呼ばれてステージで拍手を受けるシーンがあると思うのですが、それに憧れているので実現したいですね(笑)」
PLAY シリーズには音大生が多く入居しています。最後に、音大生に向けてメッセージをいただけますか。
「学生時代のように、人脈を自由に広げられたり、集中的に勉強できたりする時間というのは意外と限られています。将来音楽を仕事にできるよう、その時間を有効に使ってほしいと思います。東京は楽しいことが多いので、3割くらいの時間は楽しんでもよいと思うのですが、残りの7割は音楽に没頭して、短くも貴重な時間を存分に楽しみながら過ごしてください」