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- 前回は、劇伴作曲家・林ゆうきさんがこれまでどういう環境で音楽を制作されてきたのか、その経験によって辿り着いた理想の制作環境のこと、そして来年2月完成予定のTRACKに向けてのポジティブなご感想などをお話しいただきました。今回はさらに、TRACKの地方展開の可能性から未来の進化型コンセプトマンションまで話題は広がりました。
- PROFILE
- 林 ゆうき
1980年生まれ/京都府出身
元男子新体操選手。競技者としての音楽の選曲から伴奏音楽の世界へ傾倒していく。音楽経験はなかったが、大学在学中に独学で作曲活動を始める。卒業後、hideo
kobayashiにトラックメイキングの基礎を学び、競技系ダンス全般の伴奏音楽制作を本格的に開始。さまざまなジャンルの音楽を取り込み、元踊り手としての感覚から映像との一体感に重きを置く、独自の音楽性を築く。
[語り手]
- 林 ゆうき
- ゲスト
- 天野 里司
- 株式会社長谷工不動産ホールディングス
代表取締役社長 - 株式会社長谷工不動産
代表取締役社長
※2021年9月取材 同11月掲載時点での役職名
[聞き手]
- 澤 曙憙誕
- 株式会社アンドロップ CEO
- TRACKブランディングディレクター
TRACKの設備やデザインについてお話ししましたが、今後もニーズがあれば、TRACKを増やしていくんですよね?
もちろん、やりますよ。
京都に作ってほしいです。
そもそも僕が京都出身というのはあるんですけど、地方は東京以上にそういうところがなくて。
京都駅近くに音大の新しいキャンパスができて、その周りに例えばリノベーションして音楽をやってもいい、という場所ができればおもしろいんじゃないかなって友達と話したりしていたんです。
京都でやるんだったら、監修をしてもらって一緒に作れたらおもしろいかもしれないですね。
京都は学生さんも多いですし、いろんな音楽関係の趣味を持っているでしょうから、いいですね。
機能的につけたいものとかありますか?
基本コンセプトとして、設備やデザインがしっかり考えられているのでそういう所は継承しつつ、京都らしさみたいなものがプラスされたらいいのでは。
ちょっとアクセスが悪くても、自然環境がいいところはどうでしょう?
そうすれば、防音の環境も整えられて、全体的に家賃も下げられますから。
極端な話、東京だと秋川渓谷とか、緑や川のせせらぎがある環境のなかで作品をつくる、というのもありですか?
リモートワークが進んでいますしね。
どうなんですかね?
僕の後輩で、車にキーボードを積んで湖に行って、音楽を作ったりしている子もいますね。
ちょっと離れた郊外で制作したいっていう人は絶対増えていると思います。
それはどちらかというと、プロや、プロに近い方なんでしょうね。
趣味となると、ちょっとそこまでいってやるか、とはならない?
仕事もできるし、音楽する環境としてはすごくいいと、二刀流として、副業としてやるような...。
都心よりも家賃を下げられますからね。
そうです。
毎日出勤しなくていいという前提の方に。そういうニーズも出てくるんじゃないですか。
映像系の場合は特に郊外に行くとインターネットの速度が落ちちゃうから、そこはネックですかね。
その問題がなければ郊外で落ち着いてやりたいっていう人は前より増えてきていると思うんですよね。
自分の部屋だけでなく、共用部にこういう機能がほしいというのはありますか?
小さなレコーディング用のスタジオがあればいいとは思うんですけど、そうなると音楽の人限定になってきちゃいますよね。映像は自宅でできるようになってきているので。
そんなに共用部に機能は必要ない?
例えばミュージシャンの人達を集めて演奏を配信したい、だからホールが必要というのならわかるんですけど、クリエイター目線のTRACKの場合、そこは別にいらないのかなって思います。
PLAYとTRACKの違いですね、わかりやすいですね。
PLAYに暮らす人も、自分の演奏を配信してチャットで投げ銭して、というのをやろうとするとホールにインターネット設備がなかったり、カメラを持参しないといけなかったり、とかあると思うので、そういうのが必要になるかなと。
林さんはご自身でライブもされているから、実体験としてわかるんですよね。
どちらの方で?
この間、恵比寿のガーデンホールでやらせていただきました。(※注2021年8月公演「劇伴食堂 はやし屋 弐」)コロナ禍で人がぜんぜん来られないので、YouTubeで無料配信もしました。海外のファンの方も喜んでくれていました。
天野社長、林さんは、音楽ストリーミングサービス「Spotify」の海外で最も再生された日本人アーティストで6位だったんですよ。
海外のファンが多いということは、京都のTRACKを林さんが監修ということになれば、ファンの方が住みたいってなるかもしれないですね。
京都で作りたいっていうクリエイターは、国内のみならず海外にも絶対いると思います。
先程、自然環境のよいところでという話がありましたが、沖縄ならどうでしょう?
どういう匙加減でその土地の個性を打ち出し、住みたいと思ってもらうかが難しいと思うんですよ。
ザ・沖縄、ザ・京都にし過ぎたら、それはそれで扱いづらい。楽曲を作る時も同じ。
コテコテにし過ぎたらダメだし、それっぽいけど今風になっていておしゃれ、みたいな落としどころが難しいと思いますね。
TRACKは、“じぶんの好きと住むマンション”をコンセプトに掲げている「LIVWIZ」の一つの形態で、他に、演奏家のための「PLAY」、自転車好きのための「LUBRICANT」があります。
林さんは、こういうLIVWIZなら住んでみたいというのはありますか?
物作りが好きな人ってコロナ禍で飢えていたと思うんですよ。DIY、自転車やバイクの整備等、自分の部屋じゃできない、学校でいったら工芸室みたいなスペースがあるなら住みたいと思いますね。
いろいろお聞かせいただいたんですけど、今後の活動とか、事業展開みたいなところをお聞かせください。まずは林さんから。
本業の音楽に関しては、今年、所属事務所から独立させてもらいました。
そして、まだ発表はしてないんですけど海外からのオファーが増えていて、海外のいろんなエージェントと契約を結ぶというスタイルでやっていきます。
作品作りについてはこれまではクライアントからの依頼で音楽を制作していたのですが、それと並行して自分自身が作りたいものを作るソロワークスを始めようかなと思っています。それこそ、京都をモチーフにした音楽とか、ボーカリストやアーティストとのコラボレーションとか。
あとは、空間とインテリア、ファニチャーについて考えるのが好きなので、今回関わらせていただいたように、人が住むところに対して自分の音楽で何かお手伝いできることがあればやっていきたいですね。
ありがとうございます。ぜひご協力をお願いします。
一緒にお仕事をさせて頂くなかで、これまで以上に物件の魅力を伝えることができると思いますし、
『新しい価値の住まい』や『新しい住まい方』の提案をしていきたいですね。
※林ゆうきさんに、TRACKのイメージミュージック制作とモデルルームのコーディネートをやっていただくことになりました。ぜひご期待ください。
天野社長、今後の事業展開について教えてください。
分譲/賃貸マンションを中心に、東京から地方まで全国展開していますが、社内では、ハードをつくって終わり、ではなく、“住まわれる方にどう関わっていくか、サポートできるようなデベロッパー”に変わろうと話しています。
そのさきがけとして、我々がつくってきたコンセントマンションは、大きく次の2つに分けられると思っていて、『ライフスタイル型』と『ライフステージ型』です。
「PLAY」「LUBRICANT」「TRACK」は、ライフスタイル型ですよね。
そうです。
LUBRICANTではいろんなイベントをしているし、PLAYには共用ホールがあるから、地域の方や子どもたちと一緒にいろんなことができるんじゃないかなと考えています。今後は、様々な『つながり』をつくっていきたいと思っています。
子どもが育てやすい環境がついているマンションって魅力的ですね。
デジタル技術を活用して、たとえば、郊外や地方のマンションをリモートでつないで、子どもたちに田んぼを見せながらお米がどうやってできるのかを学んでもらったり、旦那さんたちには我々のグループのマンションに住む人たちと異業種交流をしてもらったり、全国展開だからこそできることなのかな、と。
それに、地域と関わることで、村おこしや町おこしなどと接点を持てるし、現在の社会課題に対して積極的に提案をしていきたい、と思っています。
林さんも京都へ行ったり、奥さんの実家の青森へ帰ったり、デジタルが発展したんで住まいも働く場所も分散、多拠点になっていますよね。
しかも、フリーランスやアーティストに限らず、一般の方にまで広がってきている。ただ、さっきの防音と一緒で環境があるとみんなそれに準じてやるんですけど、今はワーケーションにしても子育てにしてもまだまだ環境がないんですよ。そういうものを先進的に提案していく、ライフスタイルの変革者として推進していただけると住まいがもっとおもしろくなりますよね。
子どものことは本当にそうだと思っていて。
僕は慣れていますけど、いきなり会社に来ないで家で仕事してって言われても、子どもは聞かないじゃないですか。
遊びたいのに叱られたり、静かにさせるためにYouTubeとか見せられたりするんだったら、マンションにプレイルームみたいなところがあって、子どもの面倒を見てくれる人が常駐していて『今日はみんなでこれをつくってみよう』『畑に行って植えてみよう』みたいな情操教育のようなこともしてくれる場所があると助かりますよね。
林さんはすごいんですよ。子ども抱えながら作曲しますから。その足元に犬がいたり。
子育て作曲家ですから。そのうちそういうCMが来そうなくらい(笑)。
子育てマンションやワーケーションはありますね。
ライフスタイル型はいろんな趣味をテーマに考えてきましたが、もう一つのライフステージ型は、まずは学生マンションから始めました。次は子育て世代、それからアクティブシニアのためのアイデアを出していきたいと思っています。新しいスタイルのワーケーションも検討していきたいですね。
私は、心が動いた分だけ日常や人生は輝きを増すものと考えています。
これからも「お客様の心を動かすエネルギー/人生を輝かせるエネルギーになる住まいづくり」を進めて行きたいと思っています。
これからTRACKに入居されるのは、仕事をしながら趣味として音楽や映像を楽しんでいる方たちがメインですが、そうした方たちにアドバイスをいただけたら、と思います。
ご本人が何を目的にやられるかだと思うんですよ。
副業として収益を求めるんであれば、世間一般から求められている音楽であったり、動画であったりっていうのをつくる技術を高めないとだめだし、単純に好きで作るのであれば自分の直感を大事にすればいい。
どこに目標を置くのかを決めた方がいいと思います。
ご自身の制作活動のなかで、煮つまったときの視点の変え方や、気分転換の仕方を教えてください。
寝る、ですかね 笑。
寝ると頭の中の“ちっちゃい林”が寝ているあいだに情報を整理してくれて、次の日に見るとこうすればいいんだ、って解決してくれることが多いので。
そういう意味でも、TRACKは防音だから作業もできるし、静かな環境で眠れるからいいんじゃないですか(笑)。
では、林さん、TRACKについて最後にもう一言お願いします。
ちょっと前だったら、都心から離れていることを、マイナスに感じる人が多かったかもしれないけど、今はそれがなくなってきているから。今一番求められている、世の中のニーズにあったマンションだと思います。
TRACKに入居される方には、すばらしいものづくりとここでしかできない生活を楽しんでほしいですね。
ありがとうございました。
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