COLUMN

コラム

2023.10.04
【PLAY新丸子イベントレポート】木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン」

2023年8月27日(日)、PLAY新丸子サロンホールにて、ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)が後援する企画「グランミューズ・サロン」が開催されました。「グランミューズ・サロン」は、講師となるピアニストのもとに愛好家が集いピアノを弾き合う、ピアノを通じた新しい大人の交流の場です。講師は時に実演を交えつつ、演奏について助言しますが、あくまで批評や審査の場ではなく、楽曲、演奏、そして音楽全般について楽しく語らうことが目的です。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン
8月27日(日)グランミューズ・サロンのようす@PLAY新丸子サロンホール

今回講師を務めるのは、8年半ポーランドで研鑽された木米真理恵(きよね・まりえ)さん。全ポーランド・ショパンピアノコンクール第4位入賞など、数々のコンクールで実力を示し、オーケストラ・アンサンブル金沢、山形交響楽団をはじめ、国内外の著名なオーケストラとも共演。日本、ポーランド、イタリアを中心に各国でのリサイタルにも招待され世界的に活躍されています。また、2017年度より昭和音楽大学非常勤講師を務め、後進の指導にも力を注がれています。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン
講師を務めた木米真理恵さん

参加者の演奏に、実演を交えつつフィードバック

今回のグランミューズサロンは定員が10名という、ぜい沢な少人数制。一人10分までのプログラムを演奏し、木米講師がフィードバックをするという流れで進んでいきます。

お名前を呼ばれて前へ出る参加者の表情からは、ひしひしと緊張感が伝わってくるのですが、いざ演奏が始まると、みなさん準備してきた楽曲を見事に演奏され、会場は常に温かい拍手に包まれていました。

木米講師からは、間違えた箇所を指摘したり技術的な不足点を取り上げたりするのではなく、どういった点を強化すれば次の次元をめざすことができるかという、前向きなフィードバックがされていました。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン
参加者に的確なフィードバックをおこなう木米さん

そのどれもが非常に実践的かつ具体的で、参加者の皆さんも「うんうん」と納得しながらメモをとられていました。印象的だったのは、一つの課題に対して複数のアプローチを提示されていた点です。たとえば、トリルに苦手意識があるという参加者さんへのフィードバックでは、トリルの技術自体を上達させるための練習方法をお話しされると同時に、トリルそのものにとらわれすぎず、あくまでメロディの一部として歌うことも大切だというアドバイスがあり、曲を俯瞰する目線の大切さに気付かされました。また、楽曲の時代背景から、当時の楽器の構造を解説し、ダイナミクスについてアドバイスされるなど、切り口が多彩で飽きることがありません。

ときには実演を交えての解説も。木米講師の演奏は言葉での説明以上に学びが多く、同じ旋律でもまるで魔法がかかったかのように豊かに響きます。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン
実演を交えてよりわかりやすくアドバイス

その“魔法”の正体は、6/8拍子をいかに制御しながら演奏するのかだったり、テヌートをいかに大切に演奏するのかだったりと、講師の解説を聞くとまるで種明かしをされているかのような納得感があります。

より具体的なアドバイスは、参加者の方が演奏している最中に、講師が譜面に直接書き込む形をとっています。次々と書き込まれていくアドバイスの数々…帰宅後にこの譜面と向き合えば、新たな課題と指針が明確に浮かび上がることでしょう。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン
具体的なアドバイスは譜面へ書き込まれる

最後は、木米講師による演奏を聴きました。皆さんは美しい音楽にうっとりしつつも、勉強への意欲がさらに駆り立てられたように見受けられました。

弾き合いの場に最適なサロンホール

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

さて、今回会場となったPLAY新丸子のサロンホールは、演奏家向け防音賃貸マンション『PLAY新丸子』に併設のホールです。普段は入居者専用なのですが、今回のイベントはピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)との共同企画という形で、会場としてご利用いただきました。

参加者の方にサロンホールの感想を伺ったところ、

「コンパクトな作りですが、今回のような勉強会にはちょうどよいと思いました」「ホール付きの物件が存在することを初めて知りました。さまざまな層に需要があると思うので、もっといろんな立地に作ってほしいです」「こんなホールがあったら、普段の練習にも使うし、コンサートにも使いたいですね」

と嬉しい感想をいただきました。

また、木米講師にも同じ質問をさせていただくと、「防音室なのに一般的なスタジオで感じるような閉塞感がなくて、居心地がよかったです。また、 スタインウェイのピアノもとても弾きやすかったです」

とコメントいただきました。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

盛会のうちに終了したグランミューズ・サロン。演奏家向け防音賃貸マンションを標榜しているPLAYシリーズですが、このように音楽を愛する方々に足を運んでいただくことができ、会場自体も生き生きと輝いているように見えました。

この3年間は新型コロナウィルスの流行で、人々にとっても音楽業界にとっても大変苦しい日々でしたが、こうして再びリアルで集まって、音楽に打ち込むことができることが本当にありがたく、かけがえのない時間であると感じました。PLAYシリーズはこれからも、音楽を愛する方々に寄り添う場でありたいと考えております。今回ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。