COLUMN

コラム

2023.10.26
【PLAY新丸子イベントレポート】ピアニスト、木米真理恵の考える住まいの条件

2023年8月27日(日)、PLAY新丸子サロンホールにて、ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)が後援する企画「グランミューズ・サロン」が開催されました。本稿では、講師を務めたピアニスト、木米真理恵(きよね・まりえ)さんにお話しを伺い、音楽を愛する人にとっての理想の住まいについて考えます。

【プロフィール】
木米真理恵(きよね・まりえ)金沢市出身。2008年東京音楽大学付属高校ピアノ演奏家コースを優等賞を得て卒業。在学中、特待生奨学金を得る。同年秋よりポーランド国立ショパン音楽大学(ワルシャワ)に留学。2013年同大学院を首席卒業、同大学研究科修了。併せて2016年イモラ国際ピアノアカデミー(イタリア)卒業。これまでに岡田敦子、播本枝未子、ピオトル・パレチニ、ピエロ・ラッタリーノの各氏に師事。

全ポーランド・ショパンピアノコンクールにて外国人として唯一の入賞、第4位。2010年ショパン国際ピアノコンクール出場。第11回J.ザレンプスキ、L.ゴドフスキ、Premio Accademia 2015(ローマ)など各国際コンクール優勝。その他ピティナ、MozARTe(ドイツ)、Stefano Marizza(イタリア)、ガーシュイン国際音楽コンクール(ニューヨーク)など国内外のコンクールにて多数入賞。これまでにオーケストラ・アンサンブル金沢、山形交響楽団をはじめ、国内外の著名なオーケストラと共演。日本、ポーランド、イタリアを中心に各国でのリサイタル、音楽祭にも招待されている。2017年3月完全帰国。2018年10月にデビューCD『木米真理恵デビューCon gran espressione』を発売、レコード芸術準特選盤に選出される。演奏活動の傍ら、2017年度より昭和音楽大学非常勤講師を務める等、後進の指導にも力を注いでいる。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

ピアニストと住まいの問題

Q
木米さんは、8年半という期間をポーランドで過ごされましたが、どのような住環境だったのでしょうか。

「ポーランドには防音物件というものがないので、音出し可能の物件を探す形になります。わたしは留学を期にポーランドへ渡ったのですが、学校の目の前にある物件からちょうど退去される先輩がいらっしゃったので、入れ替わりで入居することができました。

演奏可能と言われている時間をきちんと守るのはもちろん、グランドピアノの下に分厚いカーペットを複数枚敷いたり、天井に吸音素材をつけたりして少しでも防音できるよう気をつけていました。

そこに4年ほど暮らしたあとは、旧市街すぐの物件に引っ越しをしました。外がとても賑やかな場所だったので、よい意味で音出しは気楽でしたね。むしろ、こちらが21時に練習を切り上げているのに、22時に外でサックスの音が鳴り響くような環境で(笑)。防音マンションではないのに、結局8年通して、あまり音の苦情を受けることはなかったです」

Q
木米さんの考える、音楽に打ち込むうえで必要な住環境とはなんでしょうか?

「職場から近いことと、欲を言えば24時間演奏可能であることです。なかなかその二つを満たす選択肢がなくて、今は“演奏可能時間の制限があるけれど、職場から近い”という条件の物件に住んでいます。

学生の間はよいですが、仕事をし始めると練習時間をいつ確保するかという問題が切実になります。少しでも練習時間を捻出するために、移動時間を節約するか、睡眠時間を削るかという選択肢になってしまうんですね。ただ、いくら移動時間を節約していると言っても、ときにはどうしても夜練習したい場面も出てきてしまうので、24時間演奏可能物件は魅力的です」

Q
今は夜練習したいとき、どうしているのですか?

「軽い電子ピアノがあるので、それを防音室に持ち込んで練習しています。さすがに電子ピアノを防音室内で演奏する分には階下にもまったく響かないので、どうしてもというときには、そうしていますね」

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

音楽家にとっての「PLAY」シリーズの魅力とは

Q
PLAY新丸子の感想を教えてください。

「まず先ほども言ったように、完全防音で24時間演奏可能というのが本当に魅力的ですね。しかも、アクセスがとてもよいのが気に入りました。新丸子駅からは徒歩3分とすぐですし、武蔵小杉駅から歩いても全然遠くありませんでした。アクセスがよいので、合わせやイベントなどでどなたかをお呼びする際にも、お声がけしやすいです。

こちらのサロンホールも魅力的です。今回のイベントでは10人の参加者さんに来ていただきましたが、これだけ広さがあるので、閉塞感もなくて過ごしやすかったですね。一般的な防音室と比べて、密閉された感じも少ないので、ピアノを思い切り弾いても耳が疲れません。本当にぜい沢だなと思いました」

− ありがとうございます。防音工事は専門の業者に依頼しており、おっしゃっていただいた通り、密閉感がない快適な環境と高い防音性能を両立している点がPLAYシリーズの特徴となっています。ホールだけでなく、お部屋の防音設備にもこだわりがあり、1Rのお部屋はもちろん、2Kや1LDKの間取りについても、2部屋をまとめて防音としているため、好きなお部屋に楽器を配置できるんです。

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

「それはすごくよいですね。先ほども言いましたが、今は深夜になると防音室に電子ピアノを運び込んでいるので…すべてのお部屋が防音になっているなら、小さい編成であればお部屋で合わせをすることもできてしまいますね」

Q
もしご自身がPLAYシリーズに入居するとしたら、ホールをどのように活用されますか?

「今日のように弾き合い会をしたいです。それなりの広さのあるスタジオを外部に借りるとなると大変なので、気軽に借りられていつでも来ていただけるようなホールがあるのはとても便利です。

また、わたしは室内楽をやっているので、合わせにも使いたいです。この広さがあればある程度人数がいても合わせができてよいですよね。また、お部屋で合わせるとなると片付けも必要になりますから…、マンション内にこんなホールがあったらすぐにお呼びできる点もありがたいです。大活躍しますね」

− このホールには録音機材を完備しているため、若手の方であればコンクールにエントリーするための収録をしたり、ピアノ講師の方であればレッスン動画を撮ったり…といった活用法もあります。

「いいですね。いろんな活用法を見つけられそうです」

木米真理恵講師による「グランミューズ・サロン

最後に、PLAYシリーズには音大生の入居者も多いため、ぜひ学生のみなさんにメッセージをお願いいたします。

「学生時代に、みなさんはまず自分自身の演奏の勉強を頑張ると思います。ですが、技術の向上だけに集中していると、いざ社会に出るとなったとき、そもそも自分はどんな活動をしたいんだろう、していくべきなんだろうと悩むタイミングがくるかもしれません。

ですから、学生の間にいろいろなところでいろいろな人の演奏を聞く機会を積極的にもち、自分がどんな活動をしたいのかを考えていくと良いと思います。世の中で、音楽がどういった形で受け入れられ、生きているのかを知り、音楽を通じた視野を広げて過ごしてほしいです。演奏家として活動する上で、必ずその経験が生きてくると思っています」